平成14年8月より琉球大学医学部麻酔科学講座助教授に就任しました。実は、平成13年の10月から麻酔科医局長の大役をどうにかこなしている状態であったため、自分が助教授になることに対する驚きと不安が大きく、一時期体調を崩す程でした。須加原一博麻酔科学教授から「雑用がさらに多くなるかもしれないが、気楽にやって、きつい時には遠慮なく休みなさい」とのお言葉を頂き、また医局員も私に気を使ってくれており現在までどうにか助教授の業務をこなしているところです。 私が麻酔科を志望したのは、生理学・薬理学的知識を駆使して全身管理(呼吸・循環・中枢神経系)を行なうダイナミックなところに惹かれたことが大きな理由です。また、数週間単位で患者を観察するより数秒・数分で変化する患者の状態を制御する麻酔科の仕事は、短気な性格をもつ私に合っていたのも事実です。さらに、麻酔科はいろいろな科の先生方と交流が持てるため、多くの先輩方、友人さらに後輩と情報交換ができることも楽しい一面であります。現在では、このような点を前面に出して麻酔科をアピールし、新入局者を獲得しようと活動しているところです。 日本の麻酔科医の現状は、皆さんも周知のとおり、不足しています。外科手術技術の進歩ならびに麻酔科を含めた周術期管理の発達により手術適応が広がり、10年前では行なえなかった症例(高齢者、心疾患患者、呼吸器疾患患者など)の麻酔が激増しています。そのため、今まで外科麻酔で行なっていた施設からの常勤医派遣依頼も増加していますが、麻酔科医の増加率は低く慢性的な人手不足の状態が続いています。入局者を増やすべく、麻酔科では教育という点に重点をおき平成12年から診療教育に力を注いだところ、平成14年度入局者は5人と増加しました。また、平成15年度も5人程度の新入局者を予定しており、より活気ある医局になる気配を感じてます。 私の主な研究は、臨床・基礎研究ともに「大血管手術における脊髄虚血の病態と予防」になります。その他には、「麻酔方法と術後痛の関係」、「術後予後と麻酔方法との関連」、「新たな鎮静モニタリングの開発」を手掛けています。特に、脊髄虚血に関しては、第2外科グループと協力し脊髄機能モニタリングの基礎・臨床研究を進めており、国内・国際学会で発表を行なっております。さらに、モルヒネなどのオピオイドが脊髄虚血を悪化させるというわれわれの研究結果が外国のジャーナルに掲載され(印刷中も含めて平成14年度では3編)、かなりの反響を呼んでいるようです。「術後予後と麻酔方法との関連」に関しては、静脈麻酔方法が吸入麻酔方法より術後感染を増加させるというRetrospective Studyの結果を2002年の米国麻酔科学会で発表し、多くの方々に評価されました。このように、基礎研究や臨床研究を通して、患者管理に役立つ診療を心がけており今後もこのような研究に精進していきたいと考えています。
これからの私の目標は、麻酔科研修医に対し診療・研究教育を行い、「麻酔科はやりがいのある仕事だ!」という概念を植え付け、彼らが麻酔科医師として有意義な生活を送れるように動機付けをしていくことです。さらに、平成16年度から導入されるスーパーローテーションに向けて、研修医への教育システムを確立し、研修医が麻酔に興味を抱けるような環境を作っていきたいと考えています。 今後とも、琉球大学医学部同窓生の力をお借りしながら精進し、私も微力ながら琉球大学医学部の発展に協力していきたいと考えております。どうか宜しくお願い致します。
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