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英米の学問
寺嶋 眞一 (前 生理学第二講座教授)
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私は、大学・大学院と長い間高等教育機関に在学したが、英米流の学問の大切さを理解するのには、ずいぶん時間がかかった。学問の違いに関して、誰も話すことがなかったからである。 ひとの発言には、「今ある姿」に関するものと、「あるべき姿」に関するものがある。「あるべき姿」は哲学であり、「今ある姿」は実況放送・現状報告の内容である。後者は。現実・実際を見れば分かるが、前者の内容を入手するには、洞察力が必要になる。この目的のために、英米人は高等教育を必要とし、大学がその役割を果たしている。 私は研究者(research
fellow)として若いころアメリカの医学校に勤務したが、日本の大学院を出ていたので、医学博士(Doctor of Medical
Science)であった。英米人の同業者達は、哲学博士(Doctor of Philosophy :
Ph.D.)であった。我が国の医学博士は、英米の哲学博士と同じようなものだと私は説明したが、違和感はあった。我が国には○○博士が数多くあるが、哲学のできる博士が少ないのであろう。英米では、哲学博士でなければ、高等教育の教員にはなれない。だから、英米の高等教育機関は、哲学博士の牙城をなっている。 幸か不幸か、私は医師でありながら研究者の道を歩むことになった。そうすると、研究報告を専門誌に発表しなければならない。発表は、単なる義務というよりは私の楽しみである。科学の専門誌には、それぞれ査読者がいて、彼らは哲学博士である。「あるべき姿」と「今ある姿」の両刀使いである。前者は論文の考察、後者は実験結果の部分に相当する。これは、日本の○○博士がともすれば、「今ある姿」の専門家であるのとは大きな違いである。「今ある姿」だけを述べれば、必ず、それでどうした、ということになる。彼らは意地悪ではなくて、それが知りたくて研究しているのである。 私が同窓会の皆様方に助言したいのは、哲学は一般教育だということである。日本の大学では、一般教育・教養課程がないがしろにされて、専門教育が異常に重んじられているが、教養なしでは専門家が専門馬鹿になる。だから、教養不足の人は、とりわけ医師には適当ではない。上述の日本における高等教育の弊害を補うために自発的に英米留学されることを、私は皆様方にお勧めしたい。 医師になられた皆様であれば、留学費用の捻出には、さほどの困難も伴わないことであろう。 更に、この種の留学を成功させるために、英語の習得をお勧めする。しかし、挨拶程度の英語では目的を達成できない。議論における両刀使いが必要である。時制を使って「あるべき姿」と「今ある姿」の内容を並べて示せば、下手な英語は聞き手の方が補って助けてくれる。一度、試してみることをお勧めします。戦後につぐ第三の開国となるか。期待します。
さらに興味をお持ちの方は、下記のHPを参照してください。
http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/ |
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