本年6月より昭和大学附属豊洲病院消化器科助教授となりました。そこで増田会長より寄稿してくれとのありがたいご依頼がありましたので簡単な卒後の経過と現状を書き記したいと思います。
琉球大学医学部医学科を昭和63年卒業(2期卒)いたしました後、昭和大学附属豊洲病院消化器科に入局、消化器癌の画像診断と化学療法の研究に従事されていた栗原稔教授(現名誉教授)に師事しました。医局には1期卒である菊地和人先生がすでにおられたことと、同級の藤森基次先生(2期卒)が一緒に入局しましたので他大学出身である不安は全くありませんでした。お二人には本当にお世話になりました。2年間の研修の後に昭和大学医学部第2生化学教室で大学院生として研究生活を2年半おくり、前医師会長坪井栄孝先生の病院である慈山会坪井病院に2年勤務、再び現医局にもどり助手、講師、昭和大学横浜市北部病院内科講師を経て、松川正明教授のもと現職とならせていただきました。現医局は上部下部消化管、肝胆膵すべてに対しての検査診断、治療を広く行っております。上部下部内視鏡検査及び治療、X線透視検査、超音波検査、肝血管手技的検査治療及びその他肝局所治療と多くの技術手技は1年目より教えていただきました。同時に消化器癌化学療法を臨床試験の多くに携わり臨床研究について教えていただきました。常に忙しさがありますが、縦割りがなくのびのびとした医局です。
現在の私はmedical
oncologist(臨床腫瘍内科医)として診療、研究、教育に勤しんでおります。この領域は海外に比べてひどく遅れをとっております。海外では、専門化されたmedical
oncologistが抗癌剤治療に専念し、多数の臨床研究をすごい勢いで推進させています。専門医不在の日本では臨床研究の重要性がまだ理解不十分であると言わざるを得ず、これは大きな問題です。しかし、個人的には研究が遅れていることよりも今後日本において目指すべきmedical
oncologistの臨床医像がどう確立されるかを心配しております。抗癌剤治療の対象となる消化器領域の癌患者の予後は大変に悪く、月単位の診療のうちに亡くなられる方が多いのが実状です。抗生剤治療が確立する以前の感染症に立ち向かった医師達の時代と同じ状況にあるように思えます。診療に従事する医師は知識・技術が必要です。そして加えて熱意、こころが必要なのです。医師は患者に対していち個人、いち人間として厳粛な態度で対峙しなければなりません。そこには医療の本質があると思います。私は理想的なmedical
oncologist像は臨床研究に優れた医師であることと同時に、本質的な医療を理解実践できる医師だと思います。癌領域の臨床現場は体力的にも精神的にも大変きついものではありますが、真摯な姿の患者から教えられるものも大変大きなものです。人格的にも能力的にも欠落した部分の多い私がこうして癌医療を続けていられる理由であります。そして、海外と異なる日本文化独特のmedical
oncologistが育てられればいいと思い教育現場にもまだ足をおいている次第です。
最後に文面をかりて、お世話になった方々に深謝いたします。できましたら、こんな医局でありますが興味がある方々よりご連絡いただけると幸いです。まだまだ人員不足の状況です。学びそして実践する場として一考していただくと幸いです。Mail
addressは、sato1151@med.showa-u.ac.jpです。
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