2002年7月8日発行の南風、「新任教授の御挨拶」というコーナーに寄稿し、それから3年経過しました。着任早々、機器不足、人材不足、資金不足を嘆き、七転八倒するうちに何とか教室の体制も整備されました。4月には助手に富田が就任し、研究面でパワーアップしております。徹底した成果主義を取り入れ、図に示しますように研究業績も右肩上がりとはいきませんが、そこそこの結果を出しております。これもひとえに大学院生の頑張りによるもので、本年3月には3名が課程を無事終了し、M君は学長賞まで受賞しました。現在、大学院生は3名ですが、来年2名が課程を修了予定です。したがって来年は大学院生1名という寂しい状況になりかねません。なぜ、当教室に大学院生が来ないのか?どうやら、「ウイルスって気味が悪い」と考えている人が多いようなのです。一体、「ウイルス学」講義で何を学んだのか?大学院生達に尋ねたところ、どうも講義の印象が薄い様子。というわけで、「ウイルス学」各論は学生達にパワーポイントを使って講義をしてもらうことにしました。最近、流行りの漫画「ドラゴン桜」でも先生達はこの手法を使って東大合格を目指しています。昨年は講義数が半減したために中止しましたが、今年は復活させる予定です。 それでは、研究の話題に戻ります。当分野が扱っている微生物は発癌ウイルス(HTLV-1、EBV、HCV、HHV-8)に新興・再興感染症ウイルス(日本脳炎ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス)、そしてヘリコバクター・ピロリ菌であります。これほど多くの微生物を扱っている教室は国内では希有の存在です。このように微生物の名前を挙げると気味悪そうですが、研究者の数が少ないこともあり、感染症分野の研究には多くの資金が導入され、今や時代の寵児なのです。SARSに鳥インフルエンザと新しいウイルス病が次々と出現してきます。狙いはこれらの新しいウイルスを入手し、すぐに研究を開始することです。競争相手の少ない時期であれば、Science、Natureも夢ではないのです。感染症研究は非常に多くの内容を含んでいます。そして、臨床と直結しています。感染症の病態解析や治療・予防薬、ワクチンの開発は臨床経験を有する人達には相当に魅力的に映ることでしょう。それから発癌のメカニズムの解析にもウイルスは最適です。なぜならウイルスの所有する遺伝子は非常に少ないので個々の遺伝子の機能解析が行いやすいからです。研究は分子生物学や生化学の手法を主に用いますので、基礎と臨床の融合という点では最も適した分野なのです。 研究活動として、毎週月曜日に研究報告会、水曜日に英語論文抄読会を行っています。毎月、大学院セミナーを医学研究科10分野の参加で開催し、10カ月に一度、担当が回ってきます。このため大学院生はこの期間である程度、研究の目処をたてておく必要があります。学会活動としてウイルス学会はもちろん、癌学会、血液学会、そして米国血液学会や癌学会での発表を行っています。教室の行事としては、夏のビーチパーリーに師走の泊まりでやる忘年会があります。呑み会やボーリング大会は不定期に開かれますが、現在、男性が少なく(女の園もしくは大奥と呼ばれています)、呑み会の頻度が減少中です。今なら徳川将軍の気分が味わえます。また教室の成長の記録として毎年、教室誌「きじむなあ」を発行し、医学部の各教室にお送りしています。 最後に、富田助手が4月に開催された第96回米国癌学会にてScholar-in-Training
Awardを受賞したことを付記しておきます。医学部で最も楽しく充実したホームページ(http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~virology/topall/topf.html)を御覧になれば、必ず基礎研究棟8階のウイルス学セミナー室のドアを叩きたくなるはずです。2年間の研究で学位の欲しい方。当教室では可能です。お待ちしております。
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