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Vol.14 - bP
2006/07/05発行

 琉球大学に赴任して 
 
器官病態医科学講座 女性・生殖医学分野 青木 陽一
 

 平成18年4月1日付けをもって金澤浩二教授の後任として琉球大学医学部器官病態医科学講座、女性・生殖医学分野(産科婦人科学)を担当させていただくこととなりました。私は昭和59年新潟大学医学部を卒業し、卒業と同時に新潟大学医学部産科婦人科学講座に入局し、産科婦人科学全般の臨床研修を始めました。平成3年から3年間のハーバード大学マサチューセッツ総合病院がん研究所への留学をはさみ、帰国後は新潟大学で婦人科腫瘍の分野を中心に臨床・研究・教育を行ってきました。研究の始まりは絨毛細胞の培養でした。絨毛細胞とはなんと不思議な細胞なのでしょう。正常細胞でありながら、わずか10か月の間に500gもの胎盤になってしまう。そして驚いたことに分娩という形で寿命を全うする。その増殖力はがん細胞に匹敵するものの、宿主である母体を占拠しない。絨毛細胞の増殖・分化に対するサイトカインの影響や細胞内シグナル伝達の研究もしましたが、この絨毛細胞の謎は未だ解明できず、今後も探ってみたいと思っています。その後は婦人科がんを中心に免疫療法の可能性、癌細胞の細胞内シグナル伝達、予後因子となる分子マーカーの研究を行い、さらに臨床研究として、各癌種における臨床病理学的予後因子の検討、新たなる治療法の開発を試みてきました。
 琉球大学に赴任してまだほんの1か月なのですが、驚いたことはなんと進行子宮頚癌が多いのだろうということです。沖縄県における悪性新生物登録成績をみると、年間子宮頚癌は約100例、子宮体癌は約40例、卵巣癌は約50例の発生があり、琉球大学が中心となり治療がなされてきています。この発生数以上に病棟、外来でたくさんの患者さんが治療を受けている印象があり、すばらしい環境のなかに自分は置かせてもらったと感謝するとともに、よりよい治療が提供できるよう精進努力していこうと考えている次第であります。これまで金澤先生を中心に教室の先生方の努力により腫瘍の領域に限らず、周産期医療、生殖医療においても琉球大学はすばらしい治療成績をあげてきています。これに満足することなく、さらに発展させ、また新たなる領域を開発できるよう教室員と力を合わせ、診療・研究・教育に精進し、魅力ある産婦人科の発展と後進の育成に、また重要課題である地域医療の向上に全力を尽くしていく所存であります。今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。